楽天usリートトリプルエンジンレアル毎月分配型【評価】低迷OK?
米国REITの投資信託でも特に特殊な運用をしているのが、
楽天usリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型
収益性が高い仕組みが支持を得て、各ネット証券でも常に上位にランクインしています。
2014/08/11時点では、1190億円と多くの資金を集めてる人気の投資信託です。
楽天usリートトリプルエンジンレアル(毎月分配型)の運用内容を評価
米国の不動産を運用するREITへ投資出来るものです。
単に米国REIT価格に連動させるのではなく、コール・オプションを活用したインカムプラス戦略をとっているのが特徴です。
さらにブラジルレアル通貨への投資も行います。
収益の内訳は、「米国REITの配当+米国REITのインカムプラス戦略+ブラジルレアル収益」となります。
為替ヘッジはしておりませんので、円安になれば収益の上昇が期待できます。
項目 | 説明 |
---|---|
投資対象 | 米国リートETF、ブラジルレアル |
通貨 | 米ドル、ブラジルレアル |
為替ヘッジ | なし |
決算 | 毎月17日付近、年合計12回の配当 |
設定日 | 2010-08-31 |
運用種別 | アクティブファンド |
運用形態 | ユーロ円債を利用したリート連動債に投資 |
<評価・解説>
この投資信託はとても複雑な商品で運用内容を投資初心者が理解するのは難しいと思います。
運用が複雑とはいえ、投資対象は米国REITとブラジルレアルであり明快ではあります。
しかしインカムプラス戦略の運用により、米国REITの相場とは違う動きをする可能性があるので注意が必要です。
投資対象に通貨収益をプラスする投資信託を「二階建て投資信託」などと言ったりしますが、この投資信託はインカムプラス戦略によるインカム利益をプラスしているということで「三階建て投資信託」などと呼ばれる事があります。
複雑な運用ではあるものの、ハイリターンを期待できる商品設計を実現した点はとても素晴らしいと思います。
米国REITへの投資は、リートETFにより行われます。個別の銘柄を分析してポートフォリオを決めているのではなく、上場されているリートETFへ投資している点は運用を単純化しているなと感じます。
円建て債券のユーロ円債を使った投資になりますが、為替の影響を受けますので勘違いしないようにして下さい。
円高になればマイナスになります。
楽天usリートトリプルエンジンレアルはユーロ円債に投資している
楽天usリートトリプルエンジンレアル毎月分配型を運用しているのは、
楽天投信投資顧問という会社です。
この運用会社が投資しているのは、リート連動債というものです。
楽天投信投資顧問が直接、米国リートETFやブラジルレアルを売り買いしている訳ではないのです。
リート連動債は、以下、2社が発行しているものです。
バークレイズ・バンク・ピーエルシー
クレディ・スイス・インターナショナル
この2社が米国リートETFやブラジルレアルを運用しているのです。
運用結果がリート連動債に連動するようになっているので、我々は間接的に米国REITとブラジルレアルへ投資することができるのです。
リート連動債は、ユーロ円債を使った仕組債です。
ユーロ円債とは、円建てで発行される外国債券のことで、発行コストが安く自由度が高いなどのメリットが有ります。
※欧州のユーロ通貨とは全く関係ありません。
※円建てであっても債券価格が為替の影響を受けるものへの投資と連動しているので、為替の影響を受けます。
債券と言っても運用の中身は、オプションなどの金融派生商品による取引が行われている特別な仕組みを持ったものなのです。
以上のように仕組債をうまく使った投資運用の委託をしているわけですね。
仕組債の良くない点として、運用内容の透明性が低い点です。
この投資信託が投資しているリート連動債も情報の開示がほとんどありません。
仕組債として利用している債券ですので、金利により価格が上下するわけではありません。
他の債券とは全く違うものであると理解しておきましょう。
※目論見書にはユーロ円債の一般的な話として金利変動リスクが明示されていますが、中身により事情は異なるはずです。
※金利動向は、相場に影響を与えるものですから、リスクが無いと言っているわけではありません。
インカムプラス戦略について
楽天usリートトリプルエンジンレアル毎月分配型で一番理解が難しいのは、
「インカムプラス戦略」です。
コール・オプションという金融商品を活用したもので、期限と目標価格が決められた証券を取引するものです。
指定された期限になったときその価格で買うことができるという権利を買うものであり、少ない資金で大きな取引が可能になるためレバレッジがかけられるというメリットが有ります。
恐らく、ブラジルレアルへの投資ができるのもこの資金効率を上手く利用したものなのではないでしょうか。
インカムプラス戦略の損益は、目標価格を上回った時に特徴があります。
米国ETFが目標価格を上回る上昇が合った場合、目標価格より上の部分の利益が得られないということです。値上がり益は、目標価格までなのです。
ある一定以上のプラス利益を捨てる代わりに、指定の利益を得る戦略だと理解すれば分かりやすいでしょうか。
価格が下落したときに損失の補填に当てられるので安定した収益を期待する戦略と言えそうです。
購入時手数料や運用コストを評価
項目 | 説明 |
---|---|
購入時手数料 | 0%~1.62% |
実質の信託報酬 | 1.51% |
<評価・解説>
2階建て以上の投資信託で購入時手数料が0%というのは、とても破格で買いやすいと思います。
信託報酬に関しても、2階建て以上の他の投資信託と比べたら低いと思います。
2階建て投資信託では、1.6~1.7%がほとんどです。
ユーロ円債の利用や、米国ETFを対象にしている点などが効いているのでしょうか?
同じ分類と比べたら、コストの面はとっても優秀です!
組み入れられている ポートフォリオの評価
<評価・解説>
全てリート連動債です。
運用報告書に各銘柄の年利率が掲載されていますが、中身の違いがあることを確認できます。
インカムプラス戦略もそれぞれの債券で行われており、目標価格もそれぞれ違うので適宜売り買いされます。
債券でよく示される、修正デュレーションなどというものはありませんので気にしなくてよいです。
その他、インカムプラス戦略がどの程度おこなわれているか?など詳しい内容は残念ながら開示されていません。
「IYR」は、iシェアーズ米国リートETFの銘柄コードと思われます。
・iシェアーズ 米国不動産 ETF (IYR)
http://jp.ishares.com/product_info/fund/overview/NYSEARCA/IYR.htm
配当利回りの確認をしてみましたが分かりませんでした。
インカムプラス戦略におけるリターンの貢献度について
インカムプラス戦略の中身がまったく開示されていないため、どの程度この戦略が機能しているのかが疑問です。
運用報告書に掲載されていた以下の図を手がかりにしたいと思います。
「インカムプラス戦略等」の棒グラフを確認して下さい。
第39期(2013/10/18~2013/11/18)に1%程度のプラス収益が見られますが、その他の期間では、ほとんど利益になっていません。
第42期(2014/01/18~2014/02/17)は、コール・オプションの目標価格を大きく上回る成果で収益を逃しているのが示されていますが、
それまでのインカム収益に比べると大きなものになっています。
インカムプラス戦略による収益はかなり小さく、米国リートETFの価格変動とくらべて小さな影響であることから、インカムプラス戦略によるメリットはあまり効果が発揮されていないように思います。
もしかしたら、インカムプラス戦略の比率は相当低いものなのかもしれませんね。
あくまでも最近、6ヶ月の動きを示しているだけですから、これだけでの評価は正しいものかどうかはわかりません。
ベンチマークと運用実績の比較を評価
この投資信託にはベンチマークがありません。
<評価・解説>
インカムプラス戦略では、米国リートに安定性を加えた運用ですから、米国ETFとの比較をしてもあまり意味は無いでしょう。
評価が難しいインカムプラス戦略ですから、同じような投資信託の成績などと比較してどの程度のリターンを出せているかはチェックしておくと良いと思います。
他の米国REIT投資信託と比較してみる
以下、値動きを比較したチャートになります。
(前の図)は、
・「楽天usリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型」
と
・「ダイワ 米国リート・ファンド(毎月分配型)」
・「フィデリティ・usリート・ファンド b(為替ヘッジなし)」
を同じチャート上で比較したものです。
ブラジルレアル運用の有り、無しの違いがありますから単純比較しても意味がありませんが、
前半部分でより高い収益が確保できています。
ちなみに前半部分は、ブラジルレアル安でマイナス要因となっていたと思います。
(後の図)は、
・「楽天usリート・トリプルエンジン(レアル)毎月分配型」
と
・「野村 北米reit投信(レアルコース)毎月」
を同じチャート上で比較したものです。
2014年3月までは、米国リートは上げ下げを繰り返していて価格が低迷していた頃です。
そんな時に、収益が上振れているのはインカムプラス戦略による収益の安定性の効果にも見えます。
2014年4月以降は、米国リートが再び上昇を始め出した頃です。
うまく収益につながっていませんね。
インカムプラス戦略によって目標価格を上回る収益を捨てているということの表れでしょうか?
以下は、リターンの比較です。
銘柄 | 6ヶ月 リターン |
1年 リターン |
---|---|---|
野村 北米REIT投信(レアルコース)毎月 | 24.6% | 20.2% |
楽天 USリート・トリプルエンジン(レアル)毎 | 28.4% | 15.5% |
ダイワ 米国リート・ファンド(毎月分配型) | 16.4% | 11.1% |
フィデリティ・USリートB(H無) | 16.2% | 11.7% |
※計算方法は、配当の再投資なしで本当の利回りによる計算とします。
※6ヶ月リターン期間=(2014/02/08-2014/08/08)
※1年リターン期間=(2013/08/08-2014/08/08)
楽天 USリート・トリプルエンジン(レアル)は、
野村 北米REIT投信(レアルコース)毎月と比べると
1年リターンで劣るものの、
6ヶ月リターンでは勝っている事がわかります。
相場状況によって、有利不利があるかもしれません。
リーマン・ショック前後の動きでリスク・リターンを実感してみる
過去に大きく上下したときの値動きを確認することでリスク・リターンの特性を実感してみたいと思います。
期間 | 損益率 |
---|---|
下落幅 (2008/01/04-2008/12/30) |
未運用 |
上昇幅 (2009/01/05-2009/12/30) |
未運用 |
※計算方法は、配当の再投資なしで本当の利回りによる計算とします。
<評価・解説>
2010年からの運用だったので評価出来ませんでした。
他の投資信託の値動きを見れば、-50%以上の値動きは容易に想定できます。
ブラジルレアルの値動きも関係しますから、場合によっては-60%、-70%も想定しておいた方が良いかも。
上下の大きかった期間の動きでリスク・リターンを実感してみる
期間 | 損益率 |
---|---|
上昇幅 (2013/01/04-2013/04/30) |
+31.4% |
下落幅 (2013/05/01-2013/08/30) |
-30% |
※計算方法は、配当の再投資なしで本当の利回りによる計算とします。
<評価・解説>
リーマン・ショック前後に比べたら大したことのない上昇と下落ですが、米国REIT指数が25%上下したのに比べれば大きいことが分かります。
楽天usリートトリプルエンジンレアルへの資金流入と資金流出
<評価・解説>
米国REIT市場の低迷もあって、2013年以降は米国REITへの資金流入が減っているところがほとんどなのですが、この投資信託だけは資金流入の勢いが止まっていません。
2013年は、円安トレンドが本格化し始める頃です。ブラジルレアル通貨への注目度が高いのかもしれません。
しかし、ブラジルレアルは2012年以降、レアル安の動きとなっており実際はマイナス要因となっています。
インカムプラス戦略は、米国REIT収益に安定性をもたらせる効果が期待できるので、この低迷したときこそ狙い目だと思っている人もいるのかもしれません。
基本的には相場トレンドとは異なった流入ですから、安定している資金流入を見ると一部の支持層に根強い人気があると言えるのかもしれません。
楽天usリートトリプルエンジンレアルへの評価と感想
三階建て投資信託というハイリターンの設計にもかかわらず、購入時手数料や信託報酬が安いのはとても評価出来る部分です。
インカムプラス戦略における安定性を重視することで、ハイリターンが魅力の米国REITで収益を損なってしまう点には注意したい。
個人的には米国リートの特徴である大きな値動きの魅力を消してしまうインカムプラス戦略は、相性が良いとは思えません。
とはいえ米国REITが低迷している中で良いパフォーマンスを出したことは評価できます。
インカムプラス戦略は、市場が低迷しているときにこそ力を発揮するのかもしれません。
こちらの分析結果も参考にしてください。
三階建てカバードコール戦略投資信託を暴け!楽天USリートレアル編
ブラジルレアル相場を見通した上での投資が必要不可欠です。
ブラジルレアルのことがよくわからない人には向いていません
楽天usリートトリプルエンジン(レアル)毎月分配型が購入できるネット証券
なるべく安い手数料の証券会社を選んで取引することをおすすめします。
購入時手数料(税込) | 販売会社 |
---|---|
無料 | マネックス証券 |
無料 | SBI証券 |
無料 | 楽天証券 |
1.62% | カブドットコム証券 |
※2014/08/11時点
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