貸株サービス配当金相当額の二重課税デメリット知らないとマズイ
目次
貸株サービスの配当金二重課税問題を知っていますか?
証券会社では株式を貸し出して、
「金利」をもらうことのできる「貸し株サービス」というものがあります。
保有している株式に貸し株の設定をするだけの簡単な作業で、
投資の利益をプラスアルファできるメリットがあるのものなので私も利用しています。
そして株式を貸し出しているとはいっても決算により「配当金」が発生した場合は、
「配当金相当額」として受け取ることが出来るのですがこれがくせものです。
個人の状況にもよりますが、
確定申告をすることで実質的に税金の二重払いとなる可能性があります。
これは特定口座の源泉徴収票ありでも確定申告が必要となる場合がありますので注意が必要です。
配当金相当額は総合課税の雑所得
二重課税の問題を理解するにはまず確定申告における課税方式を知っておく必要があります。
所得の課税方式には大きく分けて2つあります。
◆総合課税
◆申告分離課税
所得によってどちらかに分けられるのですが、
例えば、「給与」などが「総合課税」にあたり、
「株式などの利益」は「申告分離課税」となります。
総合課税の所得として合算しないで分離して税金を別に算定するので、
申告分離課税と言われます。
それで貸し株サービスで受け取ることのできる「配当金相当額」は「総合課税」となります。
給与などと合算して税金が算定されるものだということを知っておいて下さい。
ちなみに配当金相当額は総合課税のなかで「雑所得」になります。
配当金は源泉分離課税
通常、株式で受け取ることのできる「配当金」は、
「源泉分離課税」で税金が支払われることになっています。
源泉分離課税とはその所得を支払う人(所得の源泉)が予め税金を徴収してから残りを渡すというもので、
確定申告をしなくてもよいというのが特徴で第三の課税方式でもあります。
「配当金」は株主名簿管理人(信託銀行)によって株を保有している名義人に対して配当金が振り込まれますが、
株主名簿管理人が事前に税金を引いた上で残りの金額が振り込まれます。
※税金の支払いを代行してくれる便利な課税制度ですが、申告漏れ脱税などを防ぎ確実に税徴収するのにも役立っています。
これは特定口座の源泉徴収あり、なしとは全く無関係なので勘違いしないようにしてください。
全ての人は配当金の税金が源泉徴収され、確定申告は不要です。
配当金相当額が二重課税となる理由
貸し株サービスというのは株式を第三者へ貸し出すものです。
ことのき株式の名義人が証券会社またはその他の第三者の名義に書き換えられます。
配当金は名義人に支払われますので、
株主名簿管理人(信託銀行)から第三者名義人へ配当金が支払われることになります。
第三者へ配当金が渡った時点で、
源泉分離課税で税金が引かれているところが重要なポイントです。
そして第三者の名義人が受け取った源泉徴収後の配当金を「配当金相当額」として受け取る流れになります。
「配当金」と「配当金相当額」というのは、
まったく別物扱いになるということを理解してください。
配当金相当額として受け取った所得について、
(本当の)株主であるあなたは税金を支払っていないことになりますので確定申告で税金を支払う必要が出てきます。
第三者名義とは言え、
実質的には税金が1回引かれているのに確定申告するということは二重課税になってしまうという理屈です。
配当金相当額は総合課税なので、
給与などと合算すると所得額が大きくなるので税率も高くなることが想定されます。
それでもし所得増により税率が高くなった場合、二重課税どころではなく税制面でかなり不利になってしまう可能性もあると思います。
※総合課税では所得の大きさに応じて税率が高くなる仕組みとなっています。
そのため通常の配当金にかかる税率よりも高くなる場合があります。
確定申告をしなくてよい場合もある?
会社員で給与所得が2000万円以下の場合、同年におけるその他の雑所得を含めて20万円を超えない場合など確定申告を省略できる特例があったりします。
もともと確定申告するつもりだった場合やその他の条件など個人の状況によって判断は難しいので詳しくは管轄の税務署などでご確認ください。
=>確定申告が必要か不要かについてはこちらも参考にして下さい
配当金相当額は株などの譲渡損益と損益通算できない
通常、配当金は源泉徴収で税金は支払い済みなので確定申告する必要はありません。
しかし株などで損失が発生した場合、
配当所得を確定申告することで損益通算の対象にできますので、
配当金で源泉徴収された税金を取り戻し損失の穴埋めをすることが出来る税制メリットがあります。
しかし、配当金相当額は「総合課税」で、株などの譲渡損益は「申告分離課税」です。
「配当金相当額」は「配当金」とは全く別ものなので株などの譲渡損益と損益通算できません。
配当金は配当金として受け取った方がいい
二重課税の理屈を知ってもらうと理解できると思いますが、
「配当金」で受け取った場合より、「配当金相当額」で受け取った場合のほうが、
最終的に自分の手元に残る現金が減ってしまいます。
しかも配当金なら源泉徴収で確定申告しなくてもよいのに、
配当金相当額の場合は、確定申告が必要となってしまい面倒な手間が増えてしまいます。
さらに株などで損失が出た場合に、
損益通算できる税制メリットも利用できない。
特定口座の源泉徴収ありで確定申告不要なつもりでいると、
確定申告が必要なことに気づかず意図しない脱税をしてしまう可能性もあると思います。
最終的に受け取れる現金が減ってしまう上に手間も増える。
ハッキリ言って、配当金相当額で受け取ることはデメリットでしかありませんので必ず配当金で受け取るように注意したほうがいいです。
配当金として受け取り二重課税を回避する方法
貸し株サービスで金利を受け取りながら配当金を配当金として受け取る方法があります。
それは、配当金の権利確定日時点で貸し株サービスを解除されるようにするのです。
貸し株サービスでの貸し株設定は、
銘柄ごとや日単位でいつでも自由に貸し株サービスを解除できますので、
配当金の権利確定日に名義が自分のものになっているように解除すれば配当金として受け取ることができます。
証券会社の配当金自動受け取りサービス比較
貸し株サービスの設定を解除すればいいだけなのですが、
解除すれば当然、受け取れる金利が少なくなってしまいます。
なるべく金利を受け取り、配当金を受け取るには権利確定日にピンポイントで設定を解除する必要があります。
さらに貸し株サービスの設定解除は反映するのに時間がかかるので、
権利確定日の数日前(4営業日前など)に設定を解除しないといけませんので手動では間違える可能性が大きいです。
そこで利用したいのが、
ネット証券などで用意されている自動で貸株設定を解除するサービスです。
以下、ネット証券の自動設定サービスを比較してみました。
優待優先 設定 |
配当優先 設定 |
配当時に 自動解除可能 |
|
---|---|---|---|
マネックス証券 | ○ | ○ | ● |
SBI証券 | ○ | X | ▲ |
カブドットコム証券 | ○ | X | ▲ |
楽天証券 | ○ | X | ▲ |
※2017/02時点
貸株設定を自動解除するには証券会社によって2種類の設定が存在します。
「優待優先設定」は、
優待の権利確定日に自動で貸し株設定を解除してくれるサービスです。
「配当優先設定」は、
配当の権利確定日に自動で貸し株設定を解除してくれるサービスです。
※ほとんどの証券会社でこの設定が存在しないので注意。
注意が必要なのは「優待優先設定」だけの設定しか存在しない場合です。
優待と配当の権利日が同じ銘柄については問題無いのですが、
優待と配当の権利日が違う場合や、そもそも優待が存在しない銘柄の場合、自動で解除されません。
設定をすることで配当時に貸株設定が自動解除されるかどうかを上記表に書いておきましたが、
「▲」となっているのは配当金の受け取りが確実ではない可能性があることを示しています。
そのような場合に確実に配当を受け取るには、
手動で貸し株設定を解除する必要があります。
上記表で「●」は配当権利確定日を基準に自動解除するので確実に配当金として受け取れます。
※貸し株サービスの設定については各証券会社にて確認して下さい。
貸し株サービスおすすめの証券会社
大手ネット証券4社で配当金の権利日に合わせて、
自動で貸し株設定を解除してくれるのはマネックス証券だけです。
※2017/02時点
ただし注意が必要なのですが、
マネックス証券で配当金自動受取り設定とした場合、
貸し株金利から「配当金サービス利用率」が差し引かれることになっています。
現在、私の口座で確認してみると以下のようになっていました。
※変動する可能性がありますので最新の情報は証券会社にて確認してください。
私は配当金目的でずっと保有する株式については全てマネックス証券で買い付けるようにしています。
※マネックス証券は単元未満株も貸株サービス対象となっているのですが、
数百銘柄も保有していると手動での設定変更は絶対無理です。
マネックス証券では貸株通帳という画面で貸株金利に加えて、
配当金相当額の受け取り状況が確認できます。
配当金相当額が全ての月でゼロになっていますので全て正しく配当時に自動解除されていることが確認できます。
あなたはどのようになっているか確認しておくとよいです。
証券会社によっては貸株金利を高く設定している銘柄もありますので、
銘柄によって複数の証券会社使い分けるなど総合的に考えた方がいいですが、
優待銘柄や銘柄数が多く自分で手動管理が面倒な場合は、
便利なサービスが使える証券会社へ株式を移管してみるのもいいかもしれません。
★この記事を読んだ方はシェア/ブックマークで応援お願いします。
スポンサードリンク
お役立ち関連記事
ついでに読みたい
貸株サービス メニュー貸株サービス メニュー